2017年10月21日(土)

一昨年より,文科省スーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)に認定されている福岡雙葉高等学校(福岡市中央区)の国際教養のライティング授業のサポートを担当しています.

 

 

昨年に続き.本年度も,高校2年生を対象に,エッセイ・ライティング・プロジェクトを実施することになり,3回の講義を担当させていただくことになりました.本日は,第1回目の講義を行うため,福岡雙葉高等学校を訪問してきました.

 

 

本年度のプロジェクトのトピックは,"If you were Mayor of Fukuoka City, what would you do to facilitate globalization of Fukuoka?(もしあなたが福岡市長だったら,福岡市のグローバル化のために何をしますか)" です.

 

 

本日は,このトピックについて400〜500字程度のエッセイを書き上げるために,英語エッセイの基本構造について講義をしました.「良いエッセイとはどのようなものか」についてイメージしてもらうため,一方通行にならなよう,様々なアクティビティに取り組んでもらいました.

 

 

生徒さんからは積極的な発言があり,日々のSGH活動を通して,高いコミュニケーション能力と分析能力が身に付いていることが伝わってきました.様々な可能性を秘めた高校2年生の女子高生たち,この後どんな人生を歩んでいくのでしょう.そこに,ほんの少しだけですが関わらせていただいていること,そのような機会をいただけていること,その重みを改めて実感するとともに,自分も一教育者として彼女達に負けないよう努力を重ねていかなくてはいけないと強く感じました.

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年9月28日(木)

福井大学・医学部にて,英語論文作成支援セミナーを担当しました.

 

 

 

今年3月にも,同大学の文京キャンパスにて,自然科学系の先生方を対象とした英語論文執筆セミナ−を担当させていただいたのですが,思いのほか反響がよかったようで,今回またお声がけをいただきました. 一研究者として,研究の成果は,教育の改善に還元したいと常々考えているので,このように,学外から講演のお声がけをいただけること,必要としていただけることは,純粋に嬉しいことであります.

 

 

 

今回は,医局の先生方が対象ということで,サンプルとして扱う論文も医学系のものを選びました. CANCERというジャーナルから,比較的,IMRADの構成が分かりやすく,Move分析がしやすそうだったこちらの論文を選びました. 医学が専門ではありませんので,この論文の内容を理解するのは,なかなかチャレンジングでありましたが,結果的に,参加者の先生方にとっては適切な題材だったようです.

 

 

 

今回の内容は,Angelika H. Hoffmannの"Scientific Writing & Communication: Papers, Proposals, and Presentations"を参考に,ポイントを抜粋して,2コマの講義をデザインしました. この本は世界中の若手研究者のバイブルとなっているようですが,今回,じっくり読んでみて,やはり国際的に通用する学術論文とは何かというあたりのポイントがうまくまとめられていると思いました. 英語を母語としない我々にとっても非常に役に立つ一冊だと思います. ただ,ややボリュームがあるので(全750ページ!),ポイントだけ抜粋して解説してくれる今回のようなセミナーがあるといいかもしれませんね(自画自賛).

 

 

 

セミナー終了後,参加した先生方から,「新しい学びがたくさんあった」,「目から鱗だった」というようなポジティブなコメントをたくさんいただきました. 複数の先生のメールの最初に,「保田先生 御侍史」と書かれていて,この「御侍史」という言葉が気になったのですが,医学業界では,相手の宛名として「○○先生 御侍史」というのがよく使われるそうです. なんだか古語辞典に出てきそうな言葉だと思いましたし(サムライって漢字も入っていますし). こうした出来事も含めて非常によい経験になりました. ありがとうございました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年9月22日(金)

 

9月19日(火)から22日(金)まで,愛媛大学・法文学部で集中講義 (「英語コミュニケーション特講II )を担当しました.

 

 

学部3,4年生が対象でしたので,SLA理論の概論的な内容を扱いました. 計15回の授業で,SLA理論の歴史的変遷から,インプット処理,アウトプット,インタラクション,個人差,バイリンガリズム,第二言語ライティング(対照レトリック,訂正フィードバックなど)までをカバーしました.

 

 

通常は,15週間で行っている授業を,4日間(1日4コマ)でカバーするということで,学生さんの集中力が続くかどうかが最も心配だったのですが,得意のトークを(自分で言っている)合間合間に挟みつつ,学生中心のディスカッションの時間を多めに取りつつ,いろいろと工夫をして,何とか無事に4日間を終えることができました. 英語教育専攻の学生が多かったので,将来の授業を想定した上で,教室活動の実践などを取り入れたことも,授業のメリハリをつけることに役立ったように思います. 

 

 

大変熱心な学生さんが履修してくれていて,ディスカッションにも積極的に参加してくれました.授業の最後に提出してもらうコメントシートにも,率直な意見や感想,質問を書いてくれたので,翌日の授業のクオリティを高めることができたように思います.

 

 

とても素敵な学生さんとの出会いがあり,私にとっても非常に有意義で実り多い時間になりました.本当に,この仕事をやっていてよかったと思えた瞬間でした.

 

 

ありがとうございました.

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年8月21日(月)

論文が,TESOL Quarterlyの最新号に掲載されました.

 

 

Yasuda, S. (2017). Towards a framework for linking linguistic knowledge and writing expertise: The Interplay between SFL-based genre pedagogy and task-based language teaching. TESOL Quarterly, 51(3), 576-606.

 

 

ジャンル準拠ライティング指導に,タスクベースのアプローチ(TBLT)を応用した新しい試みの中で,書き手がどのように育っていくかを記述した論文です.

 

 

執筆→投稿→修正→再投稿→再修正…という長い道のりで,無事に掲載されるまでに約1年半かかりました.

 

 

論文を書いている過程は,悩む時間が長く,先が見えない不安にかられることもありますが,それを乗り越えて無事に論文が掲載されたこの瞬間を迎えると,全てがポジティブな意味に変わり,全てに意味があったのかもしれないと思えます.

 

 

このような「瞬間」は,私の場合は,長い年月の中で数える程しか起こらないのですが,この「瞬間」があるので,研究職を続けていられるのだろうと思います.

 

 

 

 

2017年8月6日(日)

 外国語教育メディア学会全国大会(於:名古屋学院大学)の公募シンポジウムで,発表してまいりました.

 

 

 「ジャンル準拠アプローチによる英語学術論文執筆支援ツールの開発と拡張 ー理論と実践ー」というタイトルで水本篤先生(関西大学)と近藤悠介先生(早稲田大学)と共同発表の形式でした. 私は,ジャンル準拠アプローチの理論的背景と実践への応用についての部分を担当しました.

 

 

 今回は,あくまで水本先生が開発された「AWSuM」と近藤先生が開発中の「AUTOAWSuM(オートAWSuM→「おとーさん」って読むんだそうです)」のお話がメインですので,これらの支援ツールの教材としての魅力が最大限に引き立つよう,サポート役に徹しました(つもりです).華やかなヴォーカリストを後ろから支えるドラムといったところでしょうか.上手くサポートできていたことを祈ります.

 

近藤悠介先生は,Pythonを使われているということで,ハワイ大学留学時に,「Corpus Linguistics」の授業でいきなりPythonでプログラムを書く課題が出て,夜な夜な泣きながらプログラムを書いていたことを思い出しました.近藤先生は,Pythonの講習会も開いておられるそうです.参加してみようかなと思ったり,ふと,あのハワイでの夜がトラウマ的によみがえってきたり.

 

素敵なお二人と共同で発表ができて,幸せなひと時となりました.

 

 

 

 

 

2017年7月2日(日)

第二言語ライティングシンポジウム(Symposium on Second Language Writing, 於 バンコク,タイランド)にて,研究発表を行いました.

 

2013年から2016年まで,科研Bプロジェクト(代表者:大井恭子先生)として実施した英語ライティング指導・国際比較調査の結果を報告しました.

 

日本,台湾,韓国,香港は,英語が第一言語ではなく外国語であり,「EFL環境」や「EFLライティング」というラベルでひとくくりにされることが多いのですが,今回の学生アンケート調査から,必ずしも同じラベルでひとくくりにはできない地域特有の特徴があることが見えてきました.

 

背景には,各国の言語政策や大学入試の違いがあるという考察を加えましたが,だからどうなの(so what?)という今後の方向性の検討まで持っていくには,ややデータが不足していたように思い,この点が今回の調査の反省点でもあります.

 

国際比較調査を実施するには,事前の準備がやや不足していたのではないかという反省点もあります.この反省点を糧に,引き続き,このプロジェクトを続けていければと思いますし,続けることが必要ではないかと思っています.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年3月28日(火)

福井大学(文京キャンパス)にて,若手研究者・大学院生向けの「英語論文作成セミナー」を行いました.

 

 

福井大学URAオフィスが主催してくださったセミナーですが,福井大学では,このような英語論文セミナーを開催するのは初めてのことのようです.そのためか,反響が大きかったようで,定員を上回る申込があったそうです.今日は,医局の先生も多数いらしていました.改めて,英語論文の明示的な指導に対するニーズの高さを実感しています.

 

 

今日のセミナーでは,学術論文を構成する「IMRAD」に焦点を当て,各セクションがどのようなムーヴ(Move)で展開されるかについて,実際に論文を分析しながら理解を深めていく形を取りました. それぞれのムーヴを実現する英語表現があり,分野を問わず共通して使われるパターンがあることについてもお話させていただきました.

 

 

自分で講義をしつつ,改めて,「書く」ということは,読み手と書き手のコミュニケーションであって,それはジャンルが手紙であろうと学術論文であろうと同じことなのだということを感じました. 

 

 

ムーヴを学ぶことは,読み手を導き,誘導し,伝えるべき内容(=WHAT)を正確に,漏れなく,誤解なく伝えるための手段(=HOW)なのだということ.これは,見よう見まねでできることではなく,明示的な指導が必要な領域だと私は考えています. 

 

  

自然科学系の先生方と交流できるまたとない機会となり,私にとっても大変有意義な時間となりました.ありがとうございました.

 

 

 始めてサンダーバードに乗り福井に来れたことも良い経験になりました.福井駅前に大きな恐竜のオブジェがありました.

 

 

 

 

 

 

 

2017年3月20日(月)

アメリカ応用言語学会 (American Association of Applied Linguistics, AAAL, 於 ポートランド) にて,研究発表を行いました.

 

 

新年度より,新しいプロジェクトを始めることになり,今回は,本年度実施したパイロットスタディの結果報告でした.

 

 

新プロジェクトでは,小学生を対象としたCLIL (Content Language Integrated Learning,内容言語統合型学習) の効果検証を多角的な視点から行う予定です.

 

 

今後の課題は,もし伸びが見られたとしたら,それは「Time Advantages(目標言語の学習にかけた時間)」の結果なのか,それとも「Integration(内容と言語の統合)」の結果なのか,この二つをどう区別するのか.

 

 

言語に限らず,人間の能力は,時間をかければかけるほど伸びるというものではありません(Simple addition of more exposure does not automatically produce its proportional increase in learning) .かけた時間が短くても,能力の伸びが起きることはあります.

 

 

これは,「CLILなのかNon-CLILなのか(→単に授業のラベリングの問題)」ということより,「教師がどのようなポリシーとビリーフを持っているのか(→学習者の学びに影響する要因)」に直結する問題のように思います.

 

 

したがって,CLIL vs. Non-CLILという2グループ比較は,CLILの効果を測っているというより,教師のポリシーとビリーフの影響を見ていることになるのかもしれません.

 

 

言語的特徴を量的に見ることに加えて,教師,学校,保護者など,様々な「参加者」との関係性を質的に深く見ていくことが,この研究では必要なのかもしれません. 本日の発表を終えて,今後の方向性が固まってきました.

 

 

アメリカ応用言語学会での発表は,今回で4回目になります.

 

 

いつも多くの学びがあり,刺激があり,反省があり,新年度を前に気持ちを引き締める非常に良い機会になっています.

 

2017年2月4日(土)

文科省スーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)に認定されている福岡雙葉高等学校(福岡市中央区)で担当しているエッセイ・ライティングプロジェクト,第2回目の授業でした.

 

 

第2回目の今回の授業では,英語エッセイライティングの基本として,「結束性・一貫性とは(How to create coherence and unity)」と「良いトピックセンテンスとは(How to write a good topic sentence)」に二つに焦点を当てた活動を行いました.その後,来月実施する成果発表(オーラル・プレゼンテーション)に向けて,「書き言葉と話し言葉の違い(What are the differences between written and oral languages)」について,様々な具体例を分析しながら意識を高める活動を行いました.

 

 

エッセイのトピックは,「海外の人に伝えたい福岡について,自分の考えを300~400 wordsでまとめてください」というもの.3月の成果発表には,九州大学に在籍する留学生の方々に来てもらうことになっています.このように,聞き手が誰であるか(=九大で学ぶ留学生),書く目的は何であるか(=福岡について知ってもらう)を明確にすることで,書き手は,社会的文脈に合った文体や表現方法について,より意識的な注意を払いながら文章を書き進めることができます.また,文章を書く動機付けとしても,こうした状況の明確化はとても重要です.

 

 

「九州大学の留学生の人たちがみなさんの発表を聞きに来てくれますよ」と言ったときの生徒さんたちの嬉しそうな表情!! 中には拍手をする生徒さんもいて,これから始めるエッセイライティングプロジェクトに向けて,「やる気スイッチ」が入ったことを確信しました.

 

 

日本の高校生との交流の機会は,九州大学の留学生たちにとっても大きな財産となるはずです.成果発表は,3月4日(土).高校生と留学生双方にとって有益な時間となるよう,私もできる限りの支援をしたいと思っています.

 

 

 

 

 

 

 

2017年1月30日(月)

少し先になりますが,3月下旬に,福井大学にて,若手研究者向けの「英語論文作成セミナー」を担当させていただくことになりました.

 

 

福井大学のURAオフィスの徳田さんが,きれいなポスターを作成してくださいました.

 

 

URAオフィスとは,University Research Administrationの略で,研究推進体制の充実,また大学の研究力強化を目的に,各大学に設置された機関で,確か,この体制が日本で始まったのは2年程前のことではないかと思います.

 

 

大学自体の研究力を上げ,それを周知していくには,大学教員と事務官とのタッグがどうしても必要ですし,事務官の方々のサポートなしに,我々大学教員は研究を円滑に進めていくことはできないので,URAのような体制が日本の大学に整ったことは,大変意義深いことだと思います.

 

 

福井大学URAオフィスの徳田さんも,大変熱心に取り組んでおられ,現在はメールのやりとりだけですが,毎回とても感銘を受けています.

 

 

今後も,学内のみならず学外でも,自分の経験やスキルが役に立つ場面があれば,積極的に協力・貢献していきたいと考えています.

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年 1月26日(木)

今学期,大学院では,「言語科学論特殊講義(第二言語習得論)」という授業を担当しました.

 

 

神戸大に着任してすぐに開講した授業で,事前に周知もしていなかったのですが,3名の院生の方々が参加してくれました. そのうち1人は,サバティカルで中国の大学から来日されている客員の先生でした.

 

 

みなさん,大変優秀で鋭い視点を持っており,毎回の講義では白熱したディスカッションが繰り広げられました. 私自身,改めて気づきが起こる瞬間が多々あり,学ぶことの多い15週間となりました.

 

 

今日は,講義の後,15週間の講義の総括も兼ねて(?),大学近くのレストランでお食事会を開催しました. 

 

客員教授の先生の息子さん(小学1年生)も一緒で,楽しい時間を過ごしました.

 

 

 

 

 

 

2017年 1月21日(土)

昨年より,文科省スーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)に認定されている福岡雙葉高等学校(福岡市中央区)の国際教養の授業のサポートを担当しています.

 

SGH活動が2年目を迎えた今年は,高校2年生を対象に,エッセイ・ライティング・プロジェクトを実施することになりました.本日は,その一環として英語エッセイ・ライティングの基本についての授業を行うため,福岡雙葉高等学校を訪問してきました.

 

生徒さんに会うのは1年ぶり.昨年は,「英語を学ぶ意味について考える」というトピックで講演をさせていただいたのですが,その時の内容を生徒さんがよく覚えてくれていたのと,中には,その時に私が伝えた言葉を,そのまま留学志望書の文面に使ったんですと言ってくれた生徒さんがいて,思わぬフィードバックにとても温かな気持ちになりました.自分の言葉が若い生徒さんに何らかの影響を与えることができたのだとしたら,教師として,これほど幸せなことはありません.

 

日々SGHプログラムの中で良質な英語授業を受けているようで,高校2年生ですでに非常に高い英語能力を備えた生徒さんたちですが,「ライティング」に関しては,まとまった分量の英文を書いた経験はほとんどない,ということ.本日は,「そもそもエッセイとは何か」という最も基本的なところから話を始め,90分の授業で,英語エッセイの基本構造を理解することを目標にしました.一方通行にならないよう,できるだけこちらから問いかけをし,自分の考えや意見を書いたり,ディスカッションをしたりする活動に取り組んでもらいました.

 

どの活動もこちらが期待していた以上のパフォーマンスを見せてくれた生徒さんたち.英語力というよりも,英語力を支えるそもそものベーシックなコミュニケーション能力が高度に発達しているからこそのこのパフォーマンスなのかなと思いました.Jill Cumminsが言っていることですが,「国語」とか「英語」とかどの言語を使うかには関係なく,人間にはこれらすべての言語能力を支える共通基底能力なるものが存在していて,私はこの共通基底能力を鍛えることが英語力そのものを鍛えるより重要なのではないかとここ数年で感じるようになりました.

 

本日は,素晴らしい生徒さんに囲まれ,非常に有意義な時間を過ごすことができました.次は,2月4日に第二回の授業を行う予定です.